【RT/放射線/レントゲン検査】合格率アップの注意点【Tig・アーク溶接】
一人前溶接工の登竜門とも言える検査が【RT/放射線/レントゲン検査】
現場では色々呼び方があり,「ガンマ」,「RT」,「放射線」,「レントゲン」,「X線」って呼ばれている。
ってツッコミたくなるぐらい,現場では色々と呼ばれ恐れられている。
【RT/放射線/レントゲン検査】の怖さは溶接している者なら,よくわかると思う。
溶接部の内部欠陥がハッキリとフィルムに写ってしまい,検査に合格するには腕がいるからだ。
今回の記事は【RT/放射線/レントゲン検査】の合格率を上げるにはどのような点に注意して溶接すればいいか?という記事。
溶接部【RT/放射線/レントゲン検査】とは?
現地溶接部の溶接検査については, JIS溶接試験のような「曲げ試験」や試験片を用いた「引張試験」のような,「破壊検査」の実施が困難(製品を破壊してしまう)なので,
- 外観検査
- 非破壊検査
の2つを行うのが一般的だ。
外観検査とは文字通り「製品の外観(見た目)」を検査や測定し検査する。
非破壊検査とは「RT/放射線/レントゲン検査」・「PT検査」・「超音波UT検査」などがあり,配管溶接の場合【RT/放射線/レントゲン検査】が多く用いられているのが現場の現状。
正式名称は「放射線透過検査( RT )」といい,溶接部を挟んで片方に放射線源を, もう一方にフィルムをセットして撮影することにより, 内部欠陥の位置や大きさを調べる方法。
配管現場溶接部には,「二重壁片面撮影方法」という方法で検査される。
管の内部にX線源またはフィルムを置けない場合で,X線で管壁を二重に透過して撮影する方法。
80A~800A未満の口径の配管に適用される。
フィルムの濃淡で溶接欠陥の種類が分かってしまう!ので溶接工としては,言い逃れ出来ない検査方法ってこと。
溶接【RT/放射線/レントゲン検査】に合格するために注意していること
現役溶接工として【RT/放射線/レントゲン検査】に合格するために注意していることを箇条書きで上げていきたいと思う。
これから始めて【RT/放射線/レントゲン検査】を受ける人は参考にしてほしい。
一応俺のRT検査合格率は90%は超えていることもコソッと付け加えておこう。
・しっかりと下地処理をする(黒皮磨き表裏,不純物,水分除去)。
・溶接棒にも不純物がついていないか,錆びていないかなど点検も必要。
・アルゴンガスがしっかりと流量確保されているかも確認。
・開先加工をし,ルートフェイスが自分好みか確認。
・ストロングバックやウマをかませ,ルート間隔を確保する。(広い方が溶けやすいので自分のルート間隔をつかんでおく)。
・裏波を均一に出す(アルゴンのスタート前のプリフロー,溶接後のアフターフロー,クレータ処理,両開先を溶かす,最後のつなぎは一番注意を要する)。
・クレータは確実に処理(削る)する。
・クレータを溶接中央部で処理しない。左右又は上下に逃す。
・最後の一周回って溶接をやめる直前に,裏波の状態をライトを使い目視で確認する。
・2層目以降も初層を熱入れすぎて凹ませないように電流や速度で調節することが大事。
・タングステンが母材や溶融池(プール)についてしまったら必ず溶接を止めて,グラインダーで削る(タングステン巻き込みという欠陥になる)
・タングステンの角度も尖らせすぎないように注意する(巻き込みの原因)
・思わぬ風によるブローホール発生にも注意。周りの養生を確実にする(扇風機やドアの開閉など意外とミスがある)
・RT検査だからと言っていつも以上に神経質になる必要はない。
・アーク溶接はスラグ・スパッタなどもしっかりと落とし溶接する。
・アーク溶接の低水素系溶接棒は「バックステップ」を確実に行う。
・アーク溶接の溶接棒は乾燥時間をきっちり守り吸湿しないように管理する。
・溶接電流を上げ溶け込みを重視する。外観は少し悪くてもいい。
などパッと思いついただけでもこれぐらいはある。
【RT/放射線/レントゲン検査】で多い溶接欠陥は?
現場の違いや溶接姿勢,配管の材質,厚みなどに左右されるが初心者溶接工に一番多い溶接欠陥は,
- ブローホール(BH)
- タングステン巻き込み(TI)
- アンダカット
- 溶け込み不良(IP)
だろう。
ブローホールを防ぐには?
Tig溶接で言えば,
- アルゴンガスの流量を適正にする
- プリフロー・アフターフローをしっかりと行う
- アーク長をなるべく離さない
- 風に注意する
- 溶接棒を加棒しすぎない
こと。
アーク溶接で言えば,
- バックステップ運棒でアークスタートすること
- アーク長をなるべく離さない
- ウィービング幅を取りすぎない
- 風に注意する
こと。
それでもブローホールは入る時がある。
やることだけやって結果ダメでも気にしないこと。
タングステン巻き込み(TI)を防ぐには?
タングステン巻き込みはTig溶接だけの溶接欠陥。
注意点としては,
- 溶接中にタングステンタッチしたらすぐに削りやり直す
- タングステン角度を尖らせすぎない(溶け落ちてしまう)
こと。
気をつければ無くせる溶接欠陥なので,日頃からの訓練が大事。
アンダカットを防ぐには?
ここで言うアンダカットとは溶接表面に見えるアンダカットではなく「裏波」のアンダカットのこと。
Tig溶接の裏波に多い。
ステンレス配管でよくある溶接欠陥で溶接棒が足りない時や電流が高すぎる時に発生する。
注意点としては,
- 溶接棒の加棒を「チョンチョン」とキーホールに加棒する
- 電流を下げる
こと。
感覚的な話なので自分で色々日頃から試して欲しい。
溶け込み不良を防ぐには?
溶け込み不良(IP)の注意点としては,
- 確実に開先を意識し溶かす!
- 加棒しすぎない
こと。
腕が出てくる技術なので要領を掴むまで訓練あるのみ。
【RT/放射線/レントゲン検査】判定には種類・種別がある
【RT/放射線/レントゲン検査】の判定(合否)方法は4種類あり点数を各傷に合わせ判定していく。
非破壊検査は専門外なので,詳細は下記リンクを参照願います。
基本的に配管溶接の場合は第一類合格が条件。
ほぼ無欠陥溶接という基準なので,安心(泣)してほしい。
【RT/放射線/レントゲン検査】に不合格になったら?
心配しなくていい。
フィルムで溶接欠陥の場所はわかるので削って再溶接しよう。※会社によって補修溶接の要領が決まっており,「再溶接は2回まで」などの決まりがある場合があるので注意
大事なのは次につなげること。
どんな欠陥だったのか?
原因は?
対策は?
ほとんどの溶接工が経験して通る道なので全く気にしなくていい。
ちなみに工程が遅れるとか,お客に仕事無くされるとか,検査屋に迷惑かけるとか,色々あることは認識しなければいけないけど…。
まとめ
【RT/放射線/レントゲン検査】の注意点は日頃からRT検査ではない溶接もRT検査のように溶接することが合格への近道。訓練あるのみ。
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