【職人の世界】にごまかしは効かない
一流の溶接工と言われる人が,溶接ビードを見れば努力や苦労してるかどうか,練習してるかどうかはすぐにわかる。口先だけのごまかしや言い訳は通用しない。
溶接ビードに努力の痕跡が残されるからだ。
一昔前に「死体は語る」という法医学入門のバイブルとなった大ベストセラーがあったが,それと一緒で「溶接ビードは語る」と言ってもいい。その「死体は語る」の中で著者の監察医である上野正彦さんは,
どんなに誤魔化そうとしても、もの言わぬ死体は、背後に潜む人間の憎しみや苦悩を雄弁に語りだす。
と述べている。合計で2万体となる検死を行ってきた【検死職人】から見れば言葉はいらないのだろう。
溶接ビードも同じで,どんなに口先で誤魔化しても溶接ビードみりゃわかるよってハナシ。
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努力や苦労が表れている溶接ビードとは?
綺麗な溶接ビードとはちょっと違う意味でとらえて欲しい。綺麗な溶接ビードは一目見てわかる。ここでいう努力や苦労が表れている溶接ビードとは「まだまだ発展途上ですが一流の職人(溶接工)になるためにもがいています」と言うことがわかる溶接ビードのこと。
下記のことを自主的に(強制ではなく)行っている人はいずれ一流の職人になるだろう。
努力や苦労が表れている溶接ビードとは?
- 始点・終点がしっかりと処理されていること
- 溶接ビード幅や余盛高さ,脚長などが基準内に揃えてあること
- アンダカット・オーバーラップなど溶接欠陥を除去してあること
- スパッタ・スラグなどビード周辺が清掃or手入れされていること
- 作業場周辺が理路整然としていること
では一つ一つ紹介していこう。
1.始点・終点がしっかりと処理されていること
始点・終点を見れば丁寧な仕事をしているかどうかはすぐにわかる。溶接の始点・終点というのは溶接欠陥が入りやすく適切に処理しないと割れや溶け込み不良などの重大な品質不良,溶接不良をおこす。
始点・終点のチェックポイントとしては,
- アークストライクなどはないか?
- クレーター処理はしてあるか?
- 余盛高さが調整してあるか?
- 始点・終点の溶接ビードの重なりが溶け合っているか?
- 角部の場合,母材がえぐられていないか?
などなど……….。
一流の職人ならこういうことが一目でわかる。細かいところなのだが,そこまで気を使ってこそ一流の職人と言えるだろう。努力は細部に宿る。
2.溶接ビード幅や余盛高さ,脚長などが基準内に仕上げてあること
溶接というのは基本的に図面指示がある。図面指示がない場合も存在するが,基本的な基準というのが存在する。溶接ビード幅とかは特に図面指示がない場合が多いし,積層方法やパス数も指示がない場合がある。
そこで努力の差が目に見えてくる。
溶接というのは母材に熱をいれることなので基本的には溶接しないのが一番いい。しかし溶接せざるえない。そうい場合は母材のことを考えて溶接するのがセオリー。このセオリーをどれだけ知っているか?が重要。
例えば,溶接ビード幅はどれだけならば最適なのか?
答えは開先幅の0.5mm〜1mm程度プラスなら最適。
という答えを知っていて,かつ現場の溶接ビード幅を揃えているか?どうかによって努力や苦労がわかる。
溶接ビード幅や余盛高さ,脚長などが基準内に揃えてあることは溶接後に一手間かけるかどうかで全然変わってくる。溶接して終わりではなく溶接後の確認をちゃんとしているかどうかまでが大事。
溶接に対する真摯な態度や理解がなければやらない動作なのでチェックポイントになる。
3.アンダカット・オーバーラップなど溶接欠陥を除去してあること
溶接をやったことある人ならわかると思うが,溶接した後の手直しはかなり面倒臭い。ちょっと気にくわないことがあっても,そのまま見逃して検査屋に渡したり基準内だからいいだろうとか,手直しをなるべくやらない方向に持っていくことが多い。
一流を目指している人はそこが違う。
ちょっとしたアンダカットやオーバーラップでもしっかりと直す。仕事が丁寧でかつプライドが低い。謙虚な姿勢で取り組んでいるのが溶接ビードを見ればわかる。一時的に仕事は遅くなるのだが将来のリターンは大きい。
4.スパッタ・スラグなど,溶接ビード周辺が清掃or手入れされていること
イヤイヤ仕事をしていると,どうしても溶接ビードの手入れが雑になる。下手な人ほど溶接ビード周辺が汚い特徴がある。
スラグがついたままなんてことはザラ。スラグぐらい落としていけよと思うが,そういう人は溶接後のビードなんて興味がないのか知らん顔でタバコを吸いながら偉そうにしている。
溶接後にどれだけ手間をかけれるかで溶接ビードの印象は変わる。
5.作業場周辺が理路整然としていること
職人の仕事場はかなりシンプルだ。経験や技術があるために厳選された道具で仕事ができる。そのためには常に疑問や改善していくことが不可欠となる。
溶接機の置く場所や溶接棒の保管の仕方,グラインダーの刃の選定など改善できるところは改善し次の現場に生かしていく。
そうすると作業場が自然と理路整然としてくる。
現場で出会った一流の職人で道具を道具箱一杯にしている人はいないし,作業現場もむちゃくちゃ綺麗。作業場を理路整然とするためには努力が必要。作業場が綺麗な人は溶接ビードも綺麗な人が多い。多分俺の経験上,正比例する。
一言で言えば丁寧な仕事を心がけること
究極的に要約すると「丁寧な仕事」と言い換えていい。
改善し,考え,体に染み込ませる。じっくりと時間をかけて。
そういう人の溶接ビードは見りゃわかる。
まとめ
【職人の世界】にごまかしは効かない。溶接でいえば仕上がった溶接ビードが全て。ここで上げた5つのチェックポイントを守り常に改善していけば一流の職人になれる。
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