【横向きアーク溶接 専門級】N-2H JIS溶接資格で困っていないか?
突き合わせ溶接の模擬試験で多くの人が受験している資格。
N-2H。
N-2F(下向き溶接),V(縦向き溶接)を取得し次にとる資格が,N-2H(横向き)の人も多いだろう。
受験している人が多い割にはネット上に情報が少ない。
ブログ読者さんの要望もあり,N-2Hの解説記事を作ったので参考にしてほしい。
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N-2H(横向き)溶接試験材料(テストピース)
材質はSS400
長さは150mm
幅は125mm
開先角度は30°
ルート面は1.5mm
厚みは9t
写真のような材料を突き合わせで溶接する。
N-2F,N-2Vと試験材料は同じ。
下向き,縦向きを横向きにするだけ。
試験材料作製時は両開先で板を作ることをオススメする。
何回も練習する必要があるため1回練習してポイではもったいない。
材料費と練習効率を考えて練習材料も作ろう。
N-2H(横向き)溶接試験の条件
ルート間隔
N-2Hのルート間隔は2.5mm±0.1程度。
仮付けした後のルート間隔。
アーク溶接の裏波溶接はルート間隔がすごく大事。
もし仮付け後,設定がずれていたらやりなおすぐらいシビアに設定したい。
めんどくさいは上達を遅らす。
ルート面
ルート面は,1.0mm〜1.5mm程度。
グラインダーでまっすぐに削る。
ヤスリで手仕上げする人もいるぐらい
ルート面も重要。
きっちり真っ直ぐに取ることが大事。
電流
1層目 98.0A 短絡電流
2層目 125A 短絡電流
3層目 120A 短絡電流
3層5パス仕上げ。
溶接棒
1層目 LB-52u 3.2φ×2本
2層目 LB-47 3.2φ×1本
3層目 LB-47 3.2φ×3本
N-2H(横向き)溶接試験は仮付けが合否を分ける。仮付けのコツ。
いろんな記事で書かせてもらっているが本溶接前の仮付けは命。
溶接試験の合否を左右するといっても差し支えない。
溶接はほとんど仮付けの時点で終わっている。
仮付けだけの練習を何回も必要なぐらい仮付けは重要。
まずは仮付け前に黒皮や表面のサビなどを落とす。
しっかり裏表共に黒皮やサビを落とす。
黒皮やサビ取りにはいつもベベルブラックを使用している。
母材を削らず黒皮のみ除去できるスグレモノ,かつ通常の磨き刃よりも除去スピードが速く時短になるので愛用している。
ルート面をグラインダーで仕上げる。
3mmのライナーを挟み治具にセットする。
仮付けのアークスタートは超重要。
アークスタート時に試験材にカンカンと溶接棒を叩くことはやめてほしい。
ブラッシング法でアークスタートするか,捨て板からアークを持ってきてほしい。
せっかく設定したルート間隔がずれるからだ。
ライムチタニア系のB-14や17は簡単にアークスタートできるので,ぜひ仮付けに使ってみてほしい。
1箇所仮付けし隙間を確認後,もう1箇所仮付け。
規定のルート感覚ならば作業を進める。
2箇所仮付けしたら,もう1度ルート間隔の確認。
規定の2.5mm±0.1になっているので治具から外す。
目安となる線を入れ1層目へ。
・アークスタートするために試験材をカンカン叩かないこと!
・板と板が目違いしていないこと確認する。
・仮付けはライムチタニア系の溶接棒(B-14,B-17)でする。
(低水素系溶接棒はアークスタートが難しいため)
・3.0mmぐらいのライナーがあれば挟んで仮付けする。
(仮付け時に縮む分を考慮する)
・1箇所仮付けしたら必ずルート間隔を確認する。
・仮付けはしっかりと溶接する。電流は短絡電流で120A程度。
仮付け終了したら試験官に刻印を打刻してもらう。
各都道府県の溶接協会によって違うかもしれないので,しっかり試験前の説明を聞いて欲しい。
刻印を忘れたり自分の勝手な解釈で試験を行うと失格となるので注意。
N-2H(横向き)溶接試験 1層目。裏波溶接のコツ。
N-2H(横向き)の裏波溶接は若干難しい。
裏波途中でアークが途切れやすいためだ。
では実践!
まずは治具にセット。
この時溶接に支障となる障害物などがないか確認する。
1本で150mm溶接しようとすると溶接棒が足りなくなる恐れがあるので,一度真ん中でアークを止める。
裏波の確認。
問題なく裏波が形成されていれば,電流や運棒を変えずに残りの半分へ。
裏波に何か問題があれば,電流や運棒など調整できるところは調整する。
クレーター側が裏曲げなので,2本目が本番。
1本目で確実に電流を掴む。
1層目終了。
裏波の確認。
試験片採取箇所の裏波状況の確認。
真ん中の裏波はつながるのが望ましいが,裏波をつなげるのは難しいので気にしなくてもよい。
・LB-52Uは2本使う。
ルート間隔が広いので試験材の真ん中でアークを止める。
・溶接棒の角度は70°±0.5。
開先の上側を狙う感じ。
・キーホールを形成することを意識する。
・スモールウィービングで開先を溶かす。
・穴が空きそうになったら溶接棒を戻す。
・75mm×2回の距離をスムーズに動かせる体勢を作る。
・力は抜く。ホルダーは握りしめない。
要領はN-2Vとほぼ同じ。
N-2H(横向き)溶接試験 2層目
N-2Hの2層目はウィービングで開先をしっかりと溶かすことを意識して行う。
2層目で2パス溶接する人もいれば,俺みたいに1パスで溶接する人もいる。
好みなのでどちらを選んでもいい。
では実践!
2層目に入る前に1層目でついたスラグやスパッタなどを清掃しておく。
2層目終了。
LB-47の3.2Φ 350mmを1本使用し溶接する。
2層目は3層目に影響するのでなるべく平らに仕上げたい。
いかに最終層にむけてやりやすいビードを作るか?が
最終層が綺麗に見えるコツ。
・しっかりと両端で止まる。
・開先を消してしまわないようにウィービング幅を調整する。
・1層目のスラグを綺麗に清掃する。
・クレータ処理をしっかりと行う。
・ビード形状はなるべく平にする。
・電流はできるだけ高くする。
注意する点はN-2Vとほぼ同じ。
N-2H(横向き)溶接試験 3層目(最終層)
3層目は最終層。
電流を5A程度落として外観重視で仕上げたい。
N-2H(横向き)はウィービングの振り幅を大きく取れない(ビードが垂れる)ので,3パス仕上げで溶接する。
では実践!
1パス目。
ほぼストリンガービード。
開先ギリギリを狙いアンダカットに注意しながら溶接する。
2パス目。
1パス目のビードに半分引っかけながら2パス目は溶接する。
2パス目では上の開先は溶かさずに残しておく。
3パス目の目印となる。
3パス目。
終了。
一番怖いのはアンダカット。
ストリンガービードでは溶接速度に注意して,アンダカット防止につとめる。
溶接終了後には自分で外観検査をしよう。
・ビードの表面
・ビードの幅や高さ
・始端と終端(クレータ)の状況
・アンダカット,オーバーラップの有無
試験材最終手入れ後。
ワイヤブラシなどで磨き試験官に提出しよう。
・3層目は3パスでストリンガービード。
・ビードを重ねる狙い所は,重ねるビードの約半分。
・2層目のスラグを綺麗に清掃する。
・クレータ処理をしっかりと行う。
・溶接速度に注意しアンダカット防止に努める。
・溶接終了後には自分で外観検査をする。
学科試験について
N-2Hは専門級だ。
N-2Hを受験する人は基本級を取得しているので学科試験は免除される。
N-2Fと同時に受験するなら学科試験は必要。
N-2Fを受ける際にはこの本で勉強すれば,ほぼ合格するだろう。
巻末の過去の試験問題を1回〜2回程度やれば問題ない。
ほぼ同じ問題なので問題なく合格できるだろう。
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以前に横向きの実践記事をお願いした者です!とてもわかりやすく、丁寧にありがとうございました(〃ω〃)
ちなみに1つお聞きしたいのですが、1層目のスモールウィービングに関して、横向き溶接時のスモールウィービングって小さく円を描く感じで合っていますでしょうか?それとも、↑↓↑↓のような感じでしょうか?自分は1層目をほぼストリンガーで開先上側を狙い、裏を出すように練習していたのですが…成功率が7~8割くらいなんですよね( ̄▽ ̄;)主様の実践記事の通りで練習をやり直してみます!ヽ(・∀・)ノ
あっどうも!!コメントありがとうございます。
1層目のスモールウィービングは「上下上下」って感じを小刻みにするって感じですね。
逆「の」字を描くようにとか,三角形で進むとか色々ありますが楽なので「上下上下」としています。
アーク長を短くし,アークが裏に突き抜ける半分,開先内半分って感じで裏波溶接をするといいと思います。
しっかりと溶接棒を乾燥させて,アーク長を短くし(ほぼつける感じで押し込む),音で裏に抜ける音を聴き溶接してください。
最悪クレータ側の半分,裏曲げ側が(75mm)裏波OKなら試験は合格するので安心して本番に臨んでください!!
1層目は,練習時にわざと電流を上げ110Aぐらいで穴の開く感覚をつかむのも手です。
またわからないことがあれば質問ください。
なるほど、上下上下ですか…。緊張で手が震えるので、勝手にスモールウィービングになっていそうです( ̄▽ ̄;)(笑)主さんの記事を参考に、しっかりと練習頑張ります!ありがとうございました。また困ったら、助言よろしくお願いいたします(*´ω`*)
主さん、ご無沙汰してました。来週末、いよいよ試験です!練習自体はボチボチ時間を見付けてはやっているのですが、1つ質問です。本番時に表曲げ部の裏波が良好で裏曲げ部の裏波が芳しくない場合、Fのように試験材を180℃回転させるのはOKなのでしょうか?それとも試験材の方向転換は禁止のため、表曲げ部と裏曲げ部を入れ替えたい場合は最終層を右から左へ溶接しなければならないのでしょうか?説明下手ですいません(;^∀^)
こんにちは!
ついに試験ですか!
頑張ってください^^
質問の180度回転の件ですが,N-2H試験では禁止されている行為です。
FではOKなんですが…N-2Hは現場をイメージした試験なため回転はできません。
表曲げ部と裏曲げ部は溶接協会が指定しますので,こちらには選ぶことはできません。
最初から表曲げ位置と裏曲げ位置は決まっています。
最終層の方向を変えてもダメです。
✕ 180℃
○ 180度
です、すいません(笑)
了解です!
そうなんですね…。練習中に表曲げ部の裏波は良好なのですが、裏曲げ部でアークが切れたり裏波が細かったり不具合が起こりやすいものでして(;^∀^)もう何回か練習する時間があると思うので、もう少し集中してやってみます!良い報告が出来るように頑張ります。いつも丁寧な解説と返答、誠にありがとうございます!
いえいえ!
裏曲げ部でアークが切れやすいのは,あるあるですね笑
肝心なところで「やっちまう」って言う。
棒を押し込んでむりくり裏を溶かすイメージが大事です。
頑張ってください。
いい報告をお待ちしてます!!!
主さん、いつもお世話になっております。
現在色々なパターンで練習をしていまして、
自分なりに1番やりやすいパターンが
ルート面1・5、ルート間隔2・2~3
初層を約95Aでストリンガー
(穴が開くような感じはありません)
で、決まりつつあるのですが…。
裏波は薄く細いですが、開先面はちゃんと
溶け込んでいるようです…。
一応保険を掛けるとするならば、真ん中で切り
やはりスモールウィービングをした方が
良いでしょうか?
自分では気を付けているのですが、溶接棒の
角度が母材に対しては70~80度なのは
OKとして、進行方向に対していつも45度近く倒れていく癖があるようでして…。
進行方向に対しての角度を70~80度に意識すれば、まだ裏波は出やすくなりますかね?
こんにちは!
練習お疲れ様です!
裏波が出ていれば,あまり色々試さずにそのやり方を極めた方がいいと思います。
試験も近いことですし,どツボにハマることも結構あるので。
今のやり方で,10回やって10回成功するなら別のやり方を試すのはありですが…。
棒の角度ですが,「裏に抜ける音」「キーホールの感じ」で棒の角度はその都度変えるのでなんとも言えませんが,とにかくアーク長を短くすることを意識してます。
角度は45度は倒しすぎなような気がします。
もっとよくしたい向上心は,将来の貯金です,色々試してみてください!
応援しています。
裏波をもう少し出したいということは、5Aほど
電流を上げても良さげなのかもしれませんね
試験場の都合もあって、練習は明日が最終日になり
2日空けて本番なので気合い入れます!
今のやり方で100%に近い成功率なので、
進行方向に対しての棒の角度に注意するのと
スモールウィービングを行うパターンでも
練習してみます。
主さんのアドバイス通り、棒がかなりキツキツで
余裕が無いのが心配になってきちゃいましたので、
どうせ継ぎ足すのであれば…スモールウィービングを
取り入れた形も勉強してみようかと。
毎度丁寧にお答え頂いて本当に助かります
P挑戦時には更にお世話になりそうですが…(笑)
5A電流上げるのはいいですね。
ただし裏波のアンダカットには注意してください。
100%に近い成功率なら安心です^^
ぜひN-2Pも挑戦してください!
やりがいある試験ですよ。
主さん、お疲れ様です!先程試験終了しました。
結局本番はルート面1・5ミリ
ルート間隔2・0ミリ
半分を110A、後半を115Aで。
https://d.kuku.lu/a40d05d6ef
(閲覧出来ますかね?)
画像添付しましたので、宜しければ
ご感想を教えてくださいヽ(・∀・)ノ
溶接協会の方には、大丈夫だと思うよ!と
言葉を頂けました.゚+.(・∀・)゚+.゚
添付写真見ました!
裏波バッチリですね。
大丈夫だと思います。
結果が楽しみですね。
練習したプロセスも結果同様大事ですので、これに懲りず溶接道をお互い精進しましょう!
こちらこそありがとうございます!
ガンガン新しいことに挑戦しましょう!
新しい報告お待ちしております。
主さん、ご無沙汰しておりました!
本日ハガキが届きまして…。
無事に横向き合格と、保険を掛けた立向きの
ダブルで合格出来ました!ヽ(・∀・)ノ
親身になってアドバイスを頂き、本当に
感謝です!パイプ受験時には改めて
お世話になります。これからもブログの
更新楽しみにしております.゚+.(・∀・)゚+.゚
おめでとうございます!
努力が報われると自分のことのように嬉しいです。
パイプ受験時もぜひお声かけください。
これから現場溶接が増えると思いますが,お体に気をつけて頑張ってください!
ではまたよろしくお願いします。