【JIS溶接試験】曲げ試験不合格になる溶接とは?【判断基準】
JIS溶接試験に合格するには3つの試験を合格する必要がある。
3つの試験とは,
- 学科試験(基本級取得時受験)
- 外観試験
- 曲げ試験
以上の試験に合格した者がJIS溶接試験取得者となれる。
今回の記事は③曲げ試験についての記事となる。
案外わかりづらく混乱をまねくことが多い曲げ試験。
これからJIS溶接技能者を目指す人の役に立てれば幸いだ。
では曲げ試験の判定基準を紹介していこう。
溶接の曲げ試験とは?
溶接における「曲げ試験」とは破壊試験の内の一つ。
曲げ試験片を規定の内側半径で規定の角度になるまで曲げ,湾曲部外側の裂けきず,その他の欠陥の有無を調べる試験。
破壊試験は他にも,引張試験(Tensile test),衝撃試験(Impact test),硬さ試験(Hardness test),疲れ試験(Fatigue test),クリープ試験(Creep test)などがある。
破壊試験の逆が「非破壊試験」で,RT(放射線透過試験),UT(超音波探傷試験),PT(浸透探傷試験),ET(渦流探傷試験),MT(磁粉探傷試験)などがある。
JIS溶接試験の破壊試験は溶接部を規定の半径に曲げ,傷の有無を確認する「曲げ試験」を行なっている。
溶接試験 曲げ試験不合格の実例
アンダカットから割れに進展。
ブローホール及び溶け込み不良からの割れ。
裏波不良により割れに進展。
開先残存からの割れに進展。
終始端部割れ。
さまざまな割れがあるが,どの写真も試験は不合格となる。
不合格となる原因で一番多いのが,裏波溶け込み不良により割れるパターン。
しっかりと練習しよう!
JIS溶接 曲げ試験の試験片採取範囲とは?
薄板・中板の場合。
クレータ側が裏曲げ試験となる。
横向き溶接や縦向き溶接でも同じでクレータ側が裏曲げ試験。
中肉管(N-2P)の場合。
薄管(T-1P,TN-P)の場合。
なかなかややこしいが,試験材に刻印が打ってあると思うので,刻印を目安に溶接をしてほしい。
曲げ試験だけで言えば,表曲げ試験の箇所で裏波が不十分でも外観試験さえ通ってしまえば大丈夫。
またその逆で裏曲げ試験の箇所で表曲げ試験が不十分でも大丈夫。
要は試験片採取位置さえ,ちゃんと溶接できていれば曲げ試験は合格する。
溶接の曲げ試験ー判定基準となる4項目とは?
曲げ試験は、曲げられた外面に次の欠陥が認められた場合は、不合格となる。
- 3.0 mm を超える割れがある場合
- 3.0 mm 以下の割れの合計長さが 7 mm を超える場合
- ブローホールおよび割れの合計数が、10個を超える場合
- アンダーカット、溶込み不良、スラグ巻き込み等が著しい場合
曲げられた試験片の裏面,側面及びりょうの丸み部(面取り)を除く外面に次の欠陥が認められる場合は,不合格とする。ただし,アンダカット内部の割れは対象とするが,熱影響部の割れは対象としない。また,ブローホールと割れが連続しているものは,ブローホールを含めて連続した割れの長さとみなす。
なお,肉眼では観察の難しい0.3 mm未満の不完全部については対象としない。
溶接工として割れ試験の判断をすることは無いかもしれないが,予備知識として知っておくといいだろう。
曲げ試験の方法とは?
JIS Z3122(突合せ溶接継手の曲げ試験方法)に規定されておりリンクを貼っておくので確認してほしい。
JIS検索データベースで【Z3122】と検索すれば規定全てが無料で確認できる。(※印刷やコピーはできない)
試験材を置き,油圧などで押すやり方。産業技術総合研究所の加工技術データベースより引用
押した後に曲げられた外面を検査し合否判断をする。
曲げ試験を合格するためには?
曲げ試験は溶接がきちんと溶け込んでいるか確認する試験。
外観がよくても「溶接は中身が重要!」ということ。
人間と同じで見た目(外観)がよくても性格(溶接中身)がいいとは限らない。
曲げ試験で合格するために注意すべき点は,
- 開先部をしっかりと溶かすこと
- 溶接電流を上げ(アンダカットに注意)溶け込みを深くすること
- スラグやスパッタなど不純物を巻き込ませないこと
- アーク長は短く!
- 裏波を確実に出すこと
- 溶接再開時はビードを確実に溶かしてつなぐこと
など。
どうしても曲げ試験が合格しない人は一度基本に立ち返って自分自身の溶接を見直してみよう。
いずれ外観と中身がともなってくるようになるはず。
まとめ
曲げ試験は破壊試験の内の一つ。しっかり母材を溶かし基本的な事を守れば合格するはず。せめて試験片採取位置だけは完璧な溶接を目指そう!
ブログ10万PV/月達成!
ド底辺の溶接工が必ず役立つ【溶接,Mac,お金の情報】をブログで発信中!
【渾身】の記事をしゃーなしで見てみる!