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Tig溶接の最初の壁=ローリング
Tig溶接を始めたばかりの新人溶接工の頃は,現場の職人さんがクネクネとトーチを動かしてるのを見て
と思ったのを今でも鮮明に覚えている。
あんなの簡単だろう♪と自分でやってみると全然思うように体や腕が動かず愕然とした。
Tig溶接で一番最初の壁が「ローリング」だった。
力をいれるとトーチは滑るし,溶接棒はうまく送れないし散々。教えてもらったことが実際にやってみると全然できない。
自分の不器用さに腹がたったし,情けなかった。
今回は俺がTig溶接でローリングができるようになるまでにした練習方法を紹介したいと思う。
Tig溶接ローリング練習方法。まずはすみ肉溶接から。
まずはSS400材のアングル材や捨て板で,すみ肉溶接をやってみよう。

溶接してもひずみが出にくく,穴が開かないように厚みは6tか9tがいい。※練習といえども黒皮はとること。

電流は100Aぐらい。
(低い電流で溶接速度やプールの状態を確認するため)
すみ肉溶接はノズルを角に当てれるため,ズルッとノズルが滑ることが少ない。体の力を抜いて練習するにはちょうどいいはず。
ノズルを大きいノズル(No,8ぐらい)にし,上下上下と動かして感覚をつかむ。このとき手首は固定。ひじで上下,上下とやって前へ進む練習。


意識すること
・ビード幅を揃えること
・溶融池(プール)の形を保つ
・溶接速度,リズム
・力を抜いて腹式呼吸
溶接棒はまだ入れないで,ひたすらトーチのみの練習。
溶接棒は入れずに母材を溶かすだけ。
とにかく鼻歌まじりにできるようになるまでは,溶接棒はいらない。



すみ肉溶接が慣れてきたら。転がしてみる。
慣れてきたらペットボトルや空き缶を利用して(トーチに見立てて)手首を回しながら進めるように練習する。
これをひたすら体に染み込むまで練習。
タングステンの先端やプールをイメージする。
タングステンが上下していないかイメージする。
プールがしっかり作れているかイメージする。
Tig溶接は両手を動かしながら溶接するため,体が自然と動くレベルじゃないと実践(現場)はキビシイ。
俺は一日中コーヒーの空き缶(Boss ブラック)で練習していた。
周りから見ればむちゃくちゃ変な奴。
いつも休憩時は缶コーヒーを転がしてた。
上手い人の見て
練習して
上手い人の見ての繰り返し。
肝心なのはあきらめないこと!!
簡単にできるようにはならない。
初めて自転車に乗れた時のことを思い出して欲しい。
しつこく挑戦していつのまにか乗れてなかったか?
体が覚えるレベルとはこのことだと思う。
意識しないで体が勝手に動く。
ローリングも同じ。体の動きや手の動きを考えながらローリングしている人はいない。体が勝手に動く。自転車に乗るように。



ローリング練習参考動画。
ローリング練習参考動画。
この動画は英語だがすごく良くできてる。俺はこの動画を何回も見た。プールがよく見えるのでかなりイメージしやすい。
この動画を観てタングステンの動きを目に焼き付けて欲しい。何回も観れば自然と頭で思い描けるようになる。いいイメージを頭に叩き込む。


Tig溶接ローリング上達のコツ8箇条。
①タングステンを出しすぎないこと!
慣れてくれば自分好みでいいが最初の頃は,ちょっと先端から出てるぐらい(2mm〜3mm)でいい。
タングステンを綺麗な状態に保って欲しい。
一回でもプールや溶接棒にタッチしてパチッ!てなったらタングステンを研ぎ直して欲しい。
タングステンの研ぎ直しをめんどくさがってやらない人が多すぎる!!
横着は上達を遅らせる。上達が早い人は手間をおしまない。



②イメージがすごく大事。
イメージトレーニングは絶大な効果がある。
上手くできた時のことや上手い人の溶接プール。
頭でイメージ(シュミレーション)してみる。
イメトレがパフォーマンスを向上させるという事は,すでに科学的に証明されていること。
モルツ博士の著書『サイコサイバネティクス』によると、脳は「実際の経験」と「頭の中で鮮明に描いた想像上の経験」を区別するのが苦手。
想像上の経験でも、実際の経験でも脳は同じような領域を使って情報処理を行う。脳をだまして成功体験を生み、それによって得た自信や感触によってパフォーマンスが向上すると考えられている。
③目線はタングステンの先端に置く。
タングステン先端をみてほしい。
アーク長が変わっていないか?が重要。
安定して母材との距離を保てるか?
タングステンを滑らかに動かすのを意識する。
タングステンが上下するのはNG。なにかトーチの動きがおかしいはず。



④体や腕の力を抜く。
Tig溶接に体や腕の力はいらない。
ローリング下手な人は体や腕がガチガチ。
トーチをガッチリ握らないでほしい。
人差し指と親指だけで握る感じ。ローリングは肩甲骨を回すので力が入ってると回らない。
深呼吸してリラックスしよう。
力は一切いらない。



⑤大きなノズルで練習する。
オススメはNo,8のノズル。
理由は
・プールが見やすい
・半径がでかいので大きく動かす必要がある
ゆっくり転がして大きな動きで練習してほしい。
体の動きが理解しやすいはず。



⑥下向きよりも縦向きが覚えやすい。
基本は下向きからだが,ローリングの練習は縦向きからがいい。縦向きの方が体を動かす範囲が狭くすむので楽。
初心者こそ縦向きから練習しよう!!
間違っても横向きから練習しないように。
一番ノズルが滑りやすい。
⑦練習でも開先みたいな線を引く。
捨て板に練習する場合,ただ板の上にビードを引くんじゃくて,本番のように開先に見立てて線を引いてほしい。




要は練習でも本番のようにという意味。
最終的には配管を溶接するためには,常に開先をイメージし練習しておくことが大事。
⑧溶接棒を使うのは,ローリングがちゃんとできるようになってから!
焦るのはわかるがローリングが無意識でできないと,溶接棒を入れながら溶接は難しい。
まずはローリング!
片手だけでいい!
溶接棒はあとでいい。
何事も基本が大事。
両手をいきなり使える人はいない。
ピアノの練習も片手から始める。
溶接も一緒。
千里の道も一歩から。



Tig溶接でローリングを覚えたら溶接が好きになった。
Tig溶接でローリングができるようになってから溶接が楽しく好きになった。
技術を身につけると自分に自信がつく。
上手い人のビードや苦労がわかって共感もできる。ローリングは技術職の面白さがわかる。
ローリングができるようになればビードを引くのが楽しいはず。あきらめずに練習してほしい。
ウロコみたいなビードは麻薬。
ローリングの魅力は精密機械のようなビード。
極める価値はある。
客先や同僚にうまいと言われるのは快感。
ローリングで「溶接工」という仕事の楽しさを知った。



Tig溶接には「ローリング」と「浮かし」がある。
溶接方法の話だがTig溶接には,「ローリング」と「浮かし」がある。
今回は「ローリング」だが「浮かし」も練習が必要。
また別の機会に記事にしたい。
実際現場では「浮かし」が多い。



どちらも必要で身につけるべき技術。
まとめ
Tig溶接ローリングは練習方法を要領よく教えてもらえば簡単。
体が覚えるまでは絶対にあきらめないこと!!
残念だがすぐに結果はでない。
技術は一旦覚えてしまえば自分の自信にもなる。
覚えたプロセスはきっと役に立つし,いろんなことに応用が効く。もっといい練習方法があれば遠慮せずコメントやDMくれれば嬉しい。


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