アーク長とは?【溶接で1番大事】短く保つ理由,コツを溶接工が解説
アーク長を短く保て!ってよく言われるけどなんで?
その理由や短く保つコツを知りたい。
アーク長を短く保つことは、溶接の基本で1番大事なことだよ。
アーク長とは何か、短く保つ理由、コツを初心者でも分かるように詳しく解説するね!
本記事の内容は以下の通り
・アーク長を短くする理由がわかる
・アーク長を短く保つコツがわかる【3つある】
この記事を書いている俺は「溶接歴25年」の熟練溶接工。
保有資格はJIS溶接技能者(TN-P,T-1P,N-2P,C-2P),溶接管理技術者2級,管施工管理技士1級。
要するにベテラン溶接工で溶接の専門家。
本記事は溶接のアーク長に関することを初心者でもわかりやすく書いた記事。
溶接がうまくいかない,うまくなりたいなどの悩みある人にもおすすの記事。
アーク長とは?
アーク長は、アーク溶接(アークを熱源とする溶接(融接))を行う際のアークの両端間の距離のこと。
言葉はわかりずらいので絵を見てほしい。
要するに「溶接棒,ワイヤ,タングステン電極などと溶接物との距離」のこと。
アーク長を短く保つ理由
アーク長を短く保つ理由は,
- 理想の溶け込みを得るため
- アークの広がりを抑えるため
- ビードの高さを揃えるため
- 狙った電流で溶接するため
- アンダカットを防ぐため
- オーバラップを防ぐため
- プールの大きさを一定にするため
- スラグ先行を防ぐため(被覆アーク、半自動)
- スパッタの発生を抑えるため
ザッと上記の通り。
深掘りしていこう。
1.理想の溶け込みを得るため
アーク長が短くなるとアークが集中し溶け込みは深くなる。
なので、溶接の目的である「母材と同等の耐力を得る」ということを達成するためにアーク長は短くする必要がある。
アーク長が長いと溶け込みは浅くなり理想の溶け込みを得ることが難しくなる。
2.アークの広がりを抑えるため
アーク長が長くなるとアークが広がり「溶け込み不良」「ブローホール」「余盛り不足」などの欠陥につながりやすい。
欠陥を防ぐためにもアーク長は短く保つ必要がある。
3.ビードの高さを揃えるため
アーク長が長いとビード高さがマチマチになり「余盛り不足」「ビード不均一」になりやすい。
綺麗な一貫性のあるビードを出すためにはアーク長は短く保つ必要がある。
4.狙った電流で溶接するため
アーク長は溶接電圧に関わっており、「アーク長とアーク電圧は比例関係にある」
このことから、アーク長を長くすると溶接電流も低くなり溶け込みは浅くなる。
アーク長を長く不安定にすると狙った電流(溶接機で合わせた電流)で溶接できないので適正なアーク長に保つ必要がある。
5.アンダカットを防ぐため
アーク長が長いとアンダカットをおこしやすい。
アークが広がるため余分な母材をえぐってしまいアンダカットが入る。
溶け込みが浅くアンダカットが入るアーク長の長さは百害あって一理無しの溶接。
6.オーバラップを防ぐため
アンダカツトと同じくアーク長が長いと溶け込みが浅いのでオーバラップになることもある。
アンダカツト、オーバラップともに溶接欠陥となり割れにつながるので避ける必要がある。
7.プールの大きさを一定にするため
アーク長が短いと、プールは安定した半楕円形になる。
プールが安定していればビード形成も容易になり理想の溶け込みを得やすい。
8.スラグ先行を防ぐため(被覆アーク、半自動)
これは「被覆アーク・半自動」限定になるが、アーク長が長いとスラグが先行しやすい。
スラグが先行すると「スラグ巻き込み」「溶け込み不良」が起こる。
アーク長を短く保てばスラグは先行しづらいのでアーク長によりスラグ流れを調整する。
9.スパッタの発生を抑えるため
アーク長はスパッタの発生に影響する。
アーク長が長いとスパッタの粒が大きく、短いと小さい。
溶接後工程に影響するのでスパッタの発生はアーク長を短くして極力少なくしたい。
要するにアーク長を短く保つ理由は,溶接欠陥や不具合を発生させないってことだね!
そうだね!
長年の経験でも,わざとアーク長を長くするってことは今までなかった。
「アーク長は短く」は溶接の基本ってことだね。
アーク長を短く保つコツ【3つある】
アーク長を短く保つ3つのコツは,
- 溶接音
- プールの形
- 姿勢「目線」
上記の通り。
深堀していこう。
1.溶接音
かなり抽象的だけど大事。
溶接音。
「被覆アーク溶接、半自動溶接、ティグ溶接」全てにいい音が存在する。
アーク長が長く母材から離れると「ボー」とか「ブー」とか言う不協和音。
アーク長が短く適正な状態だと、「パチパチ」とか「ピー」とか言う感じの聞いていて心地よい音。
は溶接工にとって最高の褒め言葉。
溶接が上手い人の溶接音を聴いて,いい音を耳に焼き付けることが上達への近道。
2.溶融池(プール)の形
音同様かなり抽象的。
丸に近い半楕円形のプール。
濁りのない綺麗なプール。
上手い人のプールは本当に綺麗。
スラグも大きな揺れもなく、綺麗にプールが形成されている。
そよ風が吹いている湖面のような、わずかな揺らぎと一定の溶け感。
理想のプール=適正なアーク長
プールの微細な変化の観察力も大事な要素
3.姿勢「目線」
溶接姿勢でアーク長が変わるのは素人レベル。
どんな溶接姿勢であってもアーク長を短く保つ。
姿勢を一定に保つには「目線」を意識するといい。
プールをどこから見るのか?上?横?斜め?溶接工によって目線の置き方も違う。
自分なりに見やすいプールの位置を意識し目線を変えて溶接してみる。
アーク長を短く保つにはどの姿勢、目線がやり良いか試してみるといい。
アーク長を制すものが溶接を制す【大事な要素】
先日こんなツイートをした。
溶接で一番大事な要素何か知ってますか?
それは「アーク長」です。
半自動,被覆アーク溶接,Tig溶接などどんな溶接方法でも「アーク長」で良し悪しが決まる。
溶接初心者はとにかく「アーク長」を意識してみると上手くなりますよ。
— Mac好きな溶接工@職人の概念をぶっ壊す! (@kaisyabaibai) March 13, 2020
溶接で一番大事な要素知ってますか?
それは「アーク長」です。
半自動,被覆アーク溶接,Tig溶接などどんな溶接方法でも「アーク長」で良し悪しが決まる。
溶接初心者はとにかく「アーク長」を意識してみると上手くなりますよ。
溶接で一番大事かどうかは賛否あるが,間違ってはいないと思う。
溶接は「アーク長、角度、速度、電流、電圧、材料、材質」など不確定要素が多い。
しかし,全ての溶接に共通しているのはアーク長は短い方がいいこと。
溶接がうまくいかない,溶接がうまくなりたい,溶接初心者の人は「アーク長」を意識してみるといい。
アーク長とは?【溶接で1番大事】短く保つ理由,コツ:まとめ
アーク長とは棒,ワイヤ,電極と溶接物との距離のこと。
アーク長は溶接で1番大事な要素の一つ。
アーク長を短く保つコツ
- いい溶接音を覚える
- いい溶融池(プール)の形を覚える
- 姿勢「目線」を考える
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