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【被覆アーク溶接棒の使い分け】溶接工がB棒,Z-44,LB棒【印象・コツ】を検証

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実験【被覆アーク溶接棒の使い分け】溶接工がB棒,Z-44,LB棒の【印象・コツ】を検証

 

被覆アーク溶接棒っていろいろ種類があるけど,実際溶接して使いやすいのはどれ?

種類・特徴・注意点について教えて欲しい。

溶接工
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了解!

実際溶接して感じた各溶接棒の【印象・コツ】と種類・特徴・注意点をまとめたので参考にして!

本記事の内容は以下の通り

・B棒,Z-44,LB棒の【印象・コツ】を検証→結論:LB棒がいい

・各被覆タイプにおける溶接棒の【規格の種類・特徴・注意点】が分かる

この記事を書いている俺は「溶接歴25年」の熟練溶接工。

保有資格はJIS溶接技能者,溶接管理技術者2級,管施工管理技士1級。

 

要するにベテラン溶接工で溶接の専門家。

ありとあらゆる溶接棒を使ってきているので,被覆アーク溶接棒の使い分け(規格の種類・特徴・注意点),B棒,Z-44,LB棒の【印象・コツ】を検証することにした。

B棒(14/17),Z-44,LB棒(26,47,52)【印象・コツ】を検証→結論:LB棒がいい

改めて焚き比べてみるとザックリな感想としては,LB棒が良かった。

特にLB-47が総合的に溶接しやすかった。

溶接のしやすさは品質向上につながり,欠陥の発生を押さえられる点でかなり重要。

 

では各溶接棒を下向き溶接で溶接した印象を解説していこう。

被覆アーク溶接棒 B-14【印象・コツ】


B-14を溶接した印象とコツ

・スラグの流れが速く下向きだとかぶってくる。

・ビード外観は波が細かく綺麗。

・アークスタートはやりやすく扱いやすい。

・コツは電流を高くし(下向きなら140A〜150A)スラグを飛ばしながら溶接棒を進行方向に倒す(45°前後)のがコツ。

B-14 3.2mm×400mm 電流は140A(短絡電流)

B-14は溶接棒最大手の神戸製鋼(KOBELCO)製の軟鋼棒。

B-14はB-10とB-17の改良版で最近ではB棒の主流。

作業性と溶接性のバランスがいい溶接棒で,JISの技量試験やコンクールなどでよく使われている。

被覆アーク溶接棒 B-17【印象・コツ】


B-17を溶接した印象とコツ

・溶融池(プール)が綺麗で見やすい。

・ビード外観はB-14と比べると若干粗い。

・アークスタートはやりやすく扱いやすい。

・コツは電流を高くし(下向きなら130A〜140A)スラグを飛ばしながら溶接棒を進行方向に倒す(50°前後)のがコツ。←B-14より棒は起こす

B-17 3.2mm×350mm 電流は130A(短絡電流)

B-17は溶接棒最大手の神戸製鋼(KOBELCO)製の軟鋼棒。

B-17の「-17」は昭和17年に完成したことを示している。

溶接性能重視の溶接棒で,最も信頼性のある定番溶接棒。

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被覆アーク溶接棒 Z-44【印象・コツ】

Z-44を溶接した印象とコツ

・表面をなでるような感覚で溶け込み感が薄い。

・ビード外観は光沢があり綺麗。

・アークスタートはやりやすく扱いやすい。

・コツは運棒をしっかりと意識し,プールはあまり気にせず棒をコンタクト(接地)させ溶けるスピードに合わせるのがコツ。←若干いい加減でもOK

Z-44 3.2mm×350mm 電流は140A(短絡電流)

Z-44は溶接棒最大手の神戸製鋼(KOBELCO)製の軟鋼棒。

作業性が良くビードも綺麗なことから化粧棒とも言われている。

別名ゼロード(旧呼称)。

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被覆アーク溶接棒 LB-26【印象・コツ】

LB-26を溶接した印象とコツ

・溶融池(プール)が綺麗で見やすい。

・溶接棒が固く母材をえぐるような感覚。←溶けてる感があり好み

・ビード外観は凸ビードになりやすい。

・アークスタートはやりづらく効率が悪い。

・コツはアンダカットが入りやすいのでウィービングする場合は,しっかりと両端で止まることを意識する。

LB-26 3.2mm×350mm 電流は140A(短絡電流)

LB-26は溶接棒最大手の神戸製鋼(KOBELCO)製の低水素系軟鋼棒。

LB-46,52にくらべ溶着速度が速いので、作業時間を短縮できる。

配管の溶接や構造物の溶接はLB棒が多い。

被覆アーク溶接棒 LB-47【印象・コツ】

LB-47を溶接した印象とコツ

・LB-26同様溶融池(プール)が綺麗で見やすい。

・溶接棒が固く母材をえぐるような感覚。←溶けてる感があり好み

・ビード外観は凸ビードになりやすい。

・アークスタートはやりづらく効率が悪い。

・スラグの流れがLB-26と比べると若干遅いので確実な溶接には向いている。

・コツはLB-26同様アンダカットが入りやすいのでウィービングする場合は,しっかりと両端で止まることを意識する。

LB-47 3.2mm×350mm 電流は140A(短絡電流)

LB-47は溶接棒最大手の神戸製鋼(KOBELCO)製の低水素系軟鋼棒。

最もベーシックな低水素系溶接棒で、全姿勢での溶接が可能。

JISの検定などでも使用されていて俺も愛用している溶接棒。

トータルで溶融池(プール)の見やすさ,ビード外観,溶接速度など平均して一番溶接しやすかった。

被覆アーク溶接棒 LB-52【印象・コツ】

LB-52を溶接した印象とコツ

・LB-26,47同様溶融池(プール)が綺麗で見やすい。

・溶接棒が固く母材をえぐるような感覚。←溶けてる感があり好み

・ビード外観は凸ビードになりやすい。

・アークスタートはやりづらく効率が悪い。

・スラグの流れがLB-26,47と比べると遅いので確実な溶接には向いているが効率が悪い。

・コツはLB-26,47同様アンダカットが入りやすいのでウィービングする場合は,しっかりと両端で止まることを意識する。

LB棒シリーズでスラグのかぶりが一番遅いのがLB-52。

ほとんどLB-47の同じ感覚で溶接できるがスラグのかぶりが遅いため効率はLB-47のほうがいい。

LB-52 3.2mm×350mm 電流は140A(短絡電流)

LB-52は溶接棒最大手の神戸製鋼(KOBELCO)製の低水素系軟鋼棒。

最も代表的な低水素系溶接棒。

X線性能や機械的性質に優れている。

被覆アーク溶接棒の【規格の種類・特徴・注意点】

実際溶接してみた印象などはLB棒が良かったのだが,それぞれ溶接棒には規格や特徴があり好みならなんでも使っていいというわけではない。

溶接性や作業性によって使い分ける必要があるので,紹介していこう。

 

被覆アーク溶接棒の規格の種類・特徴

溶接棒の【規格の種類・溶接性・作業性・値段】を下記の表にまとめた。

被覆系及び規格溶接性能作業性値段
種類被覆タイプ耐割れX線耐衝撃難易度外観溶け込みスパッタビードの伸び
E4319イルミナイト系(B-14,17)
E4303ライムチタニア系(Z-44)
E4316低水素系(LB-26,47,52)

※この表を作るにあたってJWES 各種被覆アーク溶接棒の被覆タイプの違い,特徴および用途について教えて下さい。を参考にした。

この上記の表から言えることは,それぞれ一長一短があり溶接内容にあった溶接棒を選ぶ必要があると言うこと。

例えば,

  • 配管の突き合わせ溶接で溶接後にRT検査がある場合は耐割れ性・耐X線性能がいい低水素系のLB棒一択。
  • コストをなるべく安く作業効率も速く見た目よく仕上げたいならZ-44を選択する。
  • ある程度溶け込みが深くて強度が欲しいならB棒を選択。

など。

溶接に求めている性能を考え溶接棒を選択する必要がある。

大まかな被覆タイプを決め,個別の溶接棒は好みで選んでいい。

 

各溶接棒の注意点【取り扱い・使用時】

溶接棒の注意点を箇条書きでまとめたので参考にしてほしい。

  1. 低水素系溶接棒は乾燥時間を厳守すること。
  2. 溶接棒の被覆(フラックス)は衝撃に弱いため取り扱いは慎重に行うこと。
  3. 過大な電流・過少な電流は溶接性能を劣化させるので適正な電流で使用すること。
  4. 過度に吸湿した棒はもったないが廃棄とすること。
  5. 溶接棒の混同を避けるため保管庫に銘柄別に収めること。
  6. 溶接棒使用前には確認の意味でその銘柄の特徴や適正電流などを復習すること。
  7. 低水素系溶接棒はアークスタート時にブローホールが発生しやすいのでバックステップ法にてアークスタートすること。

失敗談:フラックスが剥がれ試験会場で茫然と佇んだ日曜日

被覆アーク溶接棒ではいろんな思い出がある。

その中でも印象深いのは,「フラックス剥がれ事件」だ。

俺はある日の日曜日【JIS溶接技能検定N-2P】を受けるため試験会場へと車を走らせていた。

鼻歌まじりに車を運転していると道路に大きな陥没が!

あっ!と思ったのも束の間,車は大きくバウンドし着地した。

近くのコンビニに車を止め,車・タイヤに損傷はないか確認したが特に異常は見当たらない。

ほっとしている暇はなく,時間ギリギリになった試験会場へ急ぎ,到着と同時に試験開始となった。

もうお気づきの方もいると思うが,いざ被覆アーク溶接試験N-2Pの試験片を仮付けしようとした瞬間。

さっきの道路陥没による衝撃で車に載せてあった溶接棒入れの中のLB棒達から粉々に割れたフラックスが…。

試験に必要な本数しか持参しておらず,かつ知り合いも皆無。

茫然と佇む俺に周りで試験を受ける他者の溶接音がむなしく耳にこだました…。

親方
親方
バカ!

[jin_icon_info color=”#e9546b” size=”18px”]後日談:「ショックの出来事であまり記憶はないが,確か近くのおじさんに溶接棒を借りN-2Pを受験した。しかし自分とは違う溶接棒銘柄で気が動転していたのもあり試験は当然不合格だった」

 

フラックス剥がれ事件で得た教訓は2点

教訓

  1. 被覆アーク溶接棒を運搬する際は十分な養生を心がけよう!
  2. どんな銘柄の溶接棒でも焚けるように日頃から練習しておこう!

【被覆アーク溶接棒の使い分け】溶接工がB棒,Z-44,LB棒【印象・コツ】を検証まとめ

まとめ

溶接歴25年の俺がB-14/17,Z-44,LB-26,47,52から溶接しやすさで選んだ溶接棒はLB-47。

溶接棒の使い分けとしては,まず被覆タイプで選びそれから個別棒を選定する。

それぞれ特徴があるので溶接内容に沿った溶接棒を選択すること。

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