【被覆アーク溶接】ビードのつなぎ方,コツ。禁断の裏技公開。
了解!
基本的な溶接ビードのつなげ方と裏技も教えるね!
本記事の内容は以下の通り
・基本的なビードのつなげ方がわかる←バックステップ法
・熟練溶接工が使う教科書には載っていない裏技がわかる←時短術
この記事を書いている俺は「溶接歴25年」の熟練溶接工。
保有資格はJIS溶接技能者,溶接管理技術者2級,管施工管理技士1級。
要するにベテラン溶接工で溶接の専門家。
被覆アーク溶接に慣れてくると次のステップに移りたくなる。
そこでつまずくのが,「溶接ビードのつなぎ方」ではないだろうか?
被覆アーク溶接棒の長さはせいぜい400mm程度。
溶接する距離がそれ以上にある場合,どうしてもビードをつながないと溶接できない。
溶接ビードは連続していないと綺麗に見えない。
ビードのピッチも重要。
今回は被覆アーク溶接におけるビードをつなぐ方法とコツを記事にしたい。
本記事の終わりには,熟練溶接工禁断の裏技も紹介してるので参考にしてほしい。
溶接ビードを上手くつなぐには,バックステップが必須←メリットは2つある
溶接ビードを上手くつなぐには,バックステップ法というビードつなぎの技法が必要。
バックステップ法はほとんどの被覆アーク溶接棒で使え,メリットは2点ある。
- ビードを綺麗につなげることができる
- アークスタート時のブローホールを防止できる
上記の2点がメリット。
ではバックステップ法について解説していこう。
バックステップとは?
後戻りスタート運棒法といって溶接開始点の前方でアークをスタートさせて,
溶接開始点まで後戻りしてビードを置き始める方法のこと。
英語では”retract start technique(リトラクト・スタート・テクニック)”と言う。
具体的な運棒法は以下の図の通り
俺が溶接工になりたての頃は,現場や工場で親方から,
とか
とか
よく怒鳴られていた。
と言うのも,バックステップには冒頭で書いたメリットが2点あるから。
バックステップ法のメリット2点
- 上手くビードをつなげるという美観(見た目)のメリット
- アークスタート時のブローホールの発生を防ぐという品質上のメリット
基本的に親方は品質上のメリットを重視していた。
バックステップ法にはメリットしかないので溶接工ならば覚えなければならない技法の一つ。
バックステップを習得するなら道具も大事なので以下の記事も参考にしてほしい
溶接ビードのつなげ方の注意点【3つある】
ビードをつなげるには注意点は以下の3つ
- つなげる溶接ビード終端部にスラグがないこと。
- クレータ割れが生じてないこと。
- ビード幅,ピッチを確認すること。
上記の注意点3つを深堀していこう。
1.つなげる溶接ビード終端部にスラグがないこと
当たり前なことだが,つなげる溶接ビード終端部にはスラグがかぶっている。
スラグを取り除きビードをつなげないとスラグがビード内に残存し溶接欠陥となるためスラグは必ず取り除き溶接すること。
スラグを取り除かないと発生する溶接欠陥
- スラグ巻き込み
- 溶け込み不良
2.クレータ割れが生じてないこと
溶接ビード終端のクレータ部は不純物が濃縮されやすく,急冷されて溶接割れが発生しやすい。
必ずクレータ割れはスラグを取り除いた後,目視で確認してほしい。
クレータ割れを確認せず溶接すると発生する溶接欠陥
- 溶接内部割れ
- 溶け込み不良
3.ビード幅,ピッチを確認すること
ビード幅とピッチの確認は上手くビードをつなげるには確認しておく必要がある。
・ウィービング幅はどれぐらいか?
・ビードのピッチはどれくらいか?
を確認し,つなげる次の溶接ビードでも同じ運棒をすること。
溶接ビードのつなげ方のコツ【3つある】
※上記の写真は実際このブログ記事を書くにあたってバックステップでビードをつないでみた写真。まだまだ精進が足りない…。
一流の溶接工のビードはつなぎ目がわからない。
どこでつないだのかわからないほどビードが揃っている。
溶接ビードを上手くつなげるコツは以下の通り
- ビードが熱いうちにつなぐ。
- クレータとプール(溶融池)のひっかけかたを意識する
- アークを切る前に溶接棒をちょっと戻すor立てる。
上記の溶接ビードを上手くつなげるコツ3つを深堀していこう。
1.溶接ビードが熱いうちにつなぐ。
できれば溶接ビードが赤熱してるときにつなぎたい。
鉄は熱いうちに打て!じゃないけど,ビードは熱いうちにつなげ!が親方・先輩に教えてもらった格言。
溶接ビードをつなぐ溶接棒は,すぐ手に取れる位置に準備しておく必要がある。
スラグを取り除き,クレータの状態を確認し,ビード幅とピッチを瞬時に確認する。
かなり手際よく一連の動作を行う必要がある。
ビードが冷えてしまうとつなぎ部の溶け込みが若干悪く,どうしてもビードのつなぎ目が残ってしまう。
2.クレータとプール(溶融池)のひっかけかたを意識する
バックステップでクレータに戻る時に,どこまで戻るか?
それがクレータとプール(溶融池)のひっかけかた。
戻りすぎると前のビードに乗って凸ビードになるし,戻りがあまいと凹ビードになる。
基本的にはクレータの2/3程度戻り,ビードをつなぐ。
自分にあった戻り位置をつかむまで練習が必要だ。
3.アークを切る前に溶接棒をちょっと戻すor立てる
溶接棒が短くなって,つなごうと思ったらアークを切る時に溶接棒を進行方向とは逆に戻し,若干立てる。
その理由は2点ある。
- クレータの形を整えるため
- クレータの幅をビード幅よりも若干大きくするため
クレータの形を整え,大きくしておくと溶接ビードをつなぐ時に,狙い位置がわかりやすくビードをつなぎやすくなる。
上記の3つコツは何回も繰り返せば自然と要領がわかってくる。
練習時に”いかにビードをうまくつなげるか”の訓練をしてほしい。
ビードのつなぎ方 禁断の裏技←初心者はマネしないで
「ビードのつなぎ方」でいろいろ書いたが実際の現場ではゆっくりしていられない。
スラグやクレータ割れ,ピッチや幅は感覚的にわかるようにならないと現場では効率が悪い。
そこで熟練溶接工達は禁断の裏技を使う。
教科書にもどこにも載っていないビードのつなぎ方の禁断の裏技とは…..
連続して溶接棒を焚く!
つまりスラグは落とさない。
スラグが真っ赤なうちにつぎのビードを重ね,連続して溶接していく。
スラグを溶接アークで吹き飛ばしビードをつないでいく。
スラグを落とす時は次の層を重ねる時。
禁断の裏技の注意点
- かなり熟練した技術が必要
- スラグが噛んだかどうか感覚で分かる技術レベル
- 溶接棒取替&つなぎを超スピードでやらないと熱が冷める
初心者にはマネしてほしくないが,現場では必要な場面がでてくる。
厚肉管(20tなど)では特に溶接に時間がかかるためスラグ落とす時間ももったいない。
効率重視で熟練溶接工がよくやる技。
まとめ
被覆アーク溶接は奥が深い。
全ての溶接工に必ず習得してほしいのは,バックステップ(後戻りスタート運棒法)
全ての溶接棒で使える技なので一度覚えれば次のステップへいける。
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