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【アーク溶接機】直流・交流の違い9つを比較【買うならどっち?】

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【アーク溶接機】直流・交流の違い9つを比較【買うならどっち?】

 

溶接初心者
溶接初心者

アーク溶接機を買おうと思ってます。

直流・交流どっちがいいですか?

違いや特徴などを教えて欲しい。

 

溶接工
溶接工

アーク溶接機の直流・交流の違いを下記の比較表にまとめたので参考にして!

 

【アーク溶接機の直流・交流による違いの比較表】

交流アーク溶接機直流アーク溶接機
価格安い高い
構造簡単複雑
電撃の危険性高い低い
アークの安定性やや不安定安定性あり
極性の選択できないできる
磁気吹き現象起こらない起こる
メンテナンス簡単めんどう
重量重い軽い
寸法大きい小さい

※上記の比較は一般的な被覆アーク溶接機で比較。

上記の比較表を見てもらえばわかる通り,予算が許せばアーク溶接機は直流の方がおすすめ。

 

本記事の内容は以下の通り

・アーク溶接機の直流・交流の違いについてわかる

この記事を書いている俺は「溶接歴25年」の熟練溶接工。

保有資格はJIS溶接技能者(TN-P,T-1P,N-2P,C-2P),溶接管理技術者2級,管施工管理技士1級。

 

要するにベテラン溶接工で溶接の専門家。

最近は「管理者・指導者」としての立場も増加。

溶接工の全てがわかる!記事はコチラから

 

本記事は,アーク溶接機の直流・交流について違いや特徴をまとめた記事。

アーク溶接機の直流・交流による違い

アーク溶接機には直流・交流がある。

直流・交流の違いは記事冒頭で書いた通り,下記の比較表のようになる。

交流アーク溶接機直流アーク溶接機
価格安い高い
構造簡単複雑
電撃の危険性高い低い
アークの安定性やや不安定安定性あり
極性の選択できないできる
磁気吹き現象起こらない起こる
メンテナンス簡単めんどう
重量重い軽い
寸法大きい小さい

9つの違いがある。

ぶっちゃけると,ベテランの溶接工なら直流でも交流でも得られる結果は同じ,さほど気にすることはない。

しかし,「DIYで使うだけ・溶接に慣れていない・品質の安定感」などを求めると,直流溶接機のほうがおすすめできる。

 

それでは,アーク溶接機の直流・交流の違いを深堀していこう。

 

1.価格

交流アーク溶接機・・・安い

直流アーク溶接機・・・高い

価格については,直流アーク溶接機が交流アーク溶接機よりも2倍以上高い。

この価格が,直流溶接機導入にあたっての最大のネック。

台数が多くなればなるほど,厳しい値段差となってくる。

 

直流溶接ならTig溶接があるし,交流溶接機でもベテラン溶接工なら何の問題もない。

2倍以上の価値を直流アーク溶接機に見出せるかが,鍵。

 

事実として,俺の工場や同業者の工場は交流アーク溶接機がほとんど。

 

 

2.構造

交流アーク溶接機・・・可動鉄心式(単純)

直流アーク溶接機・・・インバータ制御式(複雑)

インバータ制御は基盤が必要なため,可動鉄心式よりも若干複雑になる。

構造が複雑になるってことは,故障の確率も上がる。

振動,ほこり,雨などで基盤が故障したらアウト。

 

その点交流アーク溶接機は,ほとんど故障しないという堅牢性も売りの一つ。

 

3.電撃の危険性

交流アーク溶接機・・・高い

直流アーク溶接機・・・低い

交流アーク溶接機は最高無負荷電圧(80V〜112V)が高いため,直流よりは危険とされている。(災害事例が腐るほどある)

交流アーク溶接機には無負荷電圧を抑える(25V以下)ために電撃防止装置の装着が義務付けられている。

直流アーク溶接機は最高無負荷電圧が(60V)と低いため,交流溶接機よりは安全とされている。

 

しかし,交流・直流どちらも42V(死にボルト)以上の電圧を扱っており,電撃の危険性はあることは覚えておいて欲しい。

 

4.アークの安定性

交流アーク溶接機・・・やや不安定

直流アーク溶接機・・・安定

上記の図を見て貰えばわかるように,交流は電圧や電流が決まったサイクル毎に+と-が反転する。

この反転時はアークが途切れたりする原因になる。

 

直流は常に一定。

工場の交流アーク溶接機の溶接ビードより,現場のエンジンウェルダー(直流)の溶接ビードの方が綺麗に感じる時があるのは,直流・交流の違いによるものかもしれない。

 

5.極性の選択

交流アーク溶接機・・・できない(する必要がない)

直流アーク溶接機・・・できる

詳しくはこの記事【どっち!?】被覆アーク溶接機【プラスとマイナス】【uとv】キャプタイアケーブル接続方法(つなぎ方)に書いたので,ぜひ時間があれば読んでみて欲しい。

 

交流アーク溶接機は電圧や電流が決まったサイクル毎に+と-が反転する。

そのため極性が入れ替わる。

よって極性を選択できない(する必要がない)。

 

直流は一定のため極性を入れ替えることで溶接性を変えることができる。

溶接用途接続方法溶け込み,溶接幅
正極性厚物や一般溶接(-)側にホルダー(溶接棒)
(+)側にアース(母材)
深くて狭い
逆極性薄肉,肉盛り溶接(+)側にホルダー(溶接棒)
(ー)側にアース(母材)
浅くて広い

ホルダーとアースを入れ替えることで,「溶け込み,幅」などの溶接性を変えることができる。

 

6.磁気吹き現象

交流アーク溶接機・・・起こらない

直流アーク溶接機・・・起こる

磁気吹き現象とは・・・電流によって発生する磁力線が,母材又は付近の導線中を流れる電流などによって発生する磁力線の影響を受けて,アークの中心に対して磁束密度は非対称となるために,アークが磁束密度の高い方から低い方へ傾く現象のこと。

一般的に磁気吹き現象は「直流で200A以上の高電流溶接時に発生しやすい」と言われている。

アーク溶接で200A以上の溶接となると,かなりの厚物溶接となり一般使用ではまず磁気吹き現象は起こらないと思っていい。

 

交流アーク溶接機では,「磁気吹きは起こらない」という点は覚えておいて損はないだろう。

 

7.メンテナンス

交流アーク溶接機・・・簡単

直流アーク溶接機・・・めんどくさい

俺の経験からいうと,交流アーク溶接機の堅牢性は神。

ほとんどメンテナンスフリーで十数年稼働できる。

故障があっても「線が切れた」とか「スイッチランプ玉切れ」程度。

 

直流もあんまり壊れるイメージはないが,故障するとやっかい。

原因が基盤なのか接続にあるのかとか特定するのに時間がかかり,修理も業者に依頼しなければならなくなる。

衝撃にも弱いイメージがあり,取り扱いも気を遣う。

 

8.重量

交流アーク溶接機・・・重い

直流アーク溶接機・・・軽い

鉄の塊(可動鉄心)が中に入っている交流アーク溶接機は当然重い。

直流持って交流持つと重さの違いにビックリするほど。

 

重さという点では,直流アーク溶接機の圧勝。

 

9.寸法

交流アーク溶接機・・・大きい

直流アーク溶接機・・・小さい

デカさも直流アーク溶接機の圧勝。

交流アーク溶接機は,やはり鉄の塊(可動鉄心)がありコンパクトにするにも限度がある。

 

最近はコンパクトなDIY用の直流アーク溶接機も増えており大きさを気にするなら直流一択になる。

【アーク溶接機】直流・交流の違い9つを比較:まとめ

まとめ
  1. 価格・・・交流がいい
  2. 構造・・・交流がいい
  3. 電撃の危険性・・・直流がいい
  4. アークの安定性・・・直流がいい
  5. 極性の選択・・・直流がいい
  6. 磁気吹き現象・・・交流がいい
  7. メンテナンス・・・交流がいい
  8. 重量・・・直流がいい
  9. 寸法・・・直流がいい

結果:直流5勝VS交流4勝となった。

しかし,工場などでは「予算面と堅牢性」から,現実は交流アーク溶接機が大半をしめている。

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