【溶接電源の垂下特性】とは?【読み方・英語・特徴・定電流との違い】
垂下特性って何ですか?
溶接電源の出力特性って聞いたけど,さっぱり理解できません…。
わかりやすく教えて欲しい。
垂下特性はザックリ言えば「電流が増加したら電圧が下がる電源」のことだよ。
溶接の技術も大事だけど,ある程度「電気の知識」・「アークの特性」などは知っておく必要があるからね。
詳しく説明するね!
本記事の内容は以下の通り
・溶接電源の出力特性【垂下特性】についてわかりやすく解説
この記事を書いている俺は「溶接歴25年」の熟練溶接工。
保有資格はJIS溶接技能者(TN-P,T-1P,N-2P,C-2P),溶接管理技術者2級,管施工管理技士1級。
要するにベテラン溶接工で溶接の専門家。
最近は「管理者・指導者」としての立場も増加。
記事冒頭のように,後輩にもよく相談されるようになってきた。
本記事は,溶接電源の出力特性【垂下特性】について書いた記事。
溶接電源の出力特性【垂下特性】とは?
※上記の図は日本溶接協会より引用 図のVは電圧,lはアーク長を表す。
垂下特性は「電流の増加とともに電圧が低下する特性」で、電流と電圧の関係を示す特性曲線(上図)で表現される。
垂下特性は、3種類(垂下特性・定電流特性・定電圧特性)あるアーク溶接用電源の外部特性の一つ。
垂下特性の電源には、交流式と直流式があり、日本では交流式が主流。
従来の交流アーク溶接機は、可動鉄心方式と呼ばれ、漏洩用の鉄心を動かすことによりリアクタンス(漏洩磁束の量)を増減させて、外部特性を調整する。
「電流が増加したら電圧が下がる電源」って覚えればいいよ!
溶接電源の出力特性【垂下特性】の特徴
垂下特性を使用する溶接・・・被覆アーク溶接,サブマージアーク溶接
垂下特性電源は可動鉄心式の交流アーク溶接機に用いられており,「安い・構造が単純」という理由から,かなり普及している溶接電源の出力特性である。
垂下特性の特徴としては,アーク長が短くなったり,長くなったりしても溶接電流の変動が大きくは変化しないという特徴がある。
「大きくは変化しない」という所がミソで,実は現場レベルではアーク長で溶接電流は結構変わる。
溶接電流が変わることは,「溶け込み不良」につながる恐れがある。
なので,溶接で一番大事なことはアーク長の維持だと言われる。
【アーク長】については,この記事アーク長とは?【溶接で1番大事】短く保つ理由,コツを溶接工が解説を読んで欲しい。
熟練の溶接工は「垂下特性」の特徴を利用して,微妙な手加減でビード幅・溶け込み深さ・ビードのタレなどを調整する。
具体的には,アーク長を長くして溶接ビードのタレを吹き飛ばすとか,溶接棒を押し込んで(アーク長を短くして)ビード幅を狭くするとかしている。
現場で鍛えられ自然と染み付いた技だけど,実は垂下特性を活用しながら溶接しているんだ!
お前も理解してなかったんかい!
溶接電源の出力特性【垂下特性】と【定電流特性】の違い
定電流特性を使用する溶接・・・被覆アーク(直流),ティグ溶接,プラズマ溶接,パルスマグ溶接
垂下特性と定電流特性の違いは,アーク長変動にともなう溶接電流の変化が垂下特性の場合より少ないこと。
垂下特性より安定して溶接を行うことができるとされている。(※被覆アーク溶接の場合,ベテランの溶接工だとあまり垂下特性でも定電流特性でも大差はない仕上がりになる)
また構造がインバーター制御になるため,「価格が高い」・「構造が複雑」で「メンテナンスがめんどう」というデメリットもある。
工場の交流アーク溶接機の溶接ビードより,現場のエンジンウェルダー(直流)の溶接ビードの方が綺麗に感じる時があるのは,垂下特性と定電流特性の違いによることが多い。
最近ではエンジンウェルダーでも「垂下特性」と「定電流特性」を切替できる物も増えている。
定電流特性は垂下特性の上級バージョンと覚えればいいよ!
溶接電源の出力特性【垂下特性】の読み方
垂下特性の読み方は,
垂下特性・・・すいかとくせい
と読む。
「すいげ」って読んでました…。
あーまだましだね…。
俺は「たれげ」って読んでたから…。
垂下(すいか)とは,
たれさがること。たらして下げること。
の意味があり,「電流が増加したら電圧が下がる」ことを形容して垂下特性という溶接用語になっている。
溶接電源の出力特性【垂下特性】の英語
垂下特性の対応英語は,
垂下特性・・・drooping characteristic(ドロッピング キャラクトリスティック)
drooping・・・垂れる
characteristic・・・特性
ドロップキャンディかと思いました…。
ちなみに「ハッカ」が好き。
お前は英語使うことないから覚えんでよし!笑
俺もほぼないけど…。
ちなみに俺はメロン派だけどね。
溶接電源の【定電圧特性】も合わせて覚えておこう!
※上記の図は日本溶接協会より引用 図のVは電圧,lはアーク長を表す。
溶接電源には3種類あることは,垂下特性の説明の所で書いた。
復習すると,
- 垂下特性
- 定電流特性
- 定電圧特性
の3種類。
垂下特性・・・被覆アーク,サブマージアーク溶接
定電流特性・・・被覆アーク(直流),Tig溶接,プラズマ溶接
で「垂下特性」と「定電流特性」の違いは,垂下特性より定電流特性の方がアーク長変動に電流値が左右されづらいという違いがあった。
「垂下特性」と「定電流特性」は兄弟みたいな物だが,定電圧特性はちょっと別物で,
定電流特性・・・CO2・マグ・ミグ溶接の半自動溶接
に使われ,特徴は,
定電圧特性とは、電流が増減しても電圧が一定となる性質のこと
で,3種類の溶接電源のうち唯一「アーク長の自己制御作用」を持っている。
アーク長の自己制御作用とは,「アーク長を一定に保つ作用」のこと。
詳しくは,日本溶接協会のホームページで確認してほしいが,定電圧特性によって半自動溶接は成り立っている重要な特性である。
【溶接電源の垂下特性】とは?:まとめ
- 垂下特性とは,被覆アーク溶接(交流),サブマージアーク溶接に使われており「電流が増加したら電圧が下がる電源」のこと。
- 定電流特性とは,垂下特性とは兄弟で「アーク長変動による電流変化が垂下特性より少ない」電源特性のこと。被覆アーク(直流),Tig溶接,プラズマ溶接など。
- 定電圧特性とは,半自動溶接(CO2・マグ・ミグ溶接)の重要な特性で「アーク長の自己制御作用」を持っており「電流が増減しても電圧が一定となる性質」のこと。
ブログ10万PV/月達成!
ド底辺の溶接工が必ず役立つ【溶接,Mac,お金の情報】をブログで発信中!
【渾身】の記事をしゃーなしで見てみる!