【裏当て金】材質・厚み・溶接記号・良い点・悪い点【まとめ】
裏当て金って何?
材質・厚み・溶接記号など基礎知識を教えて欲しい。
裏当て金は軽視しがちだけど,大事な溶接の要素だね。
簡単にまとめたら参考にして!
本記事の内容は以下の通り
- 裏当て金とは?【エンドタブとの違い】
- 裏当て金の『材質』
- 裏当て金の『厚み』
- 裏当て金の『溶接記号』
- 裏当て金の『良い点・悪い点』
この記事を書いている俺は「溶接歴25年超」の熟練溶接工。
保有資格は,JIS溶接技能者(TN-P,T-1P,N-2P,C-2P),溶接管理技術者2級,管施工管理技士1級。
要するに,現場歴が長い職人。
本記事は,溶接における裏当て金を簡単にまとめて解説した記事。
- 裏当て金の基礎知識をサクッと知りたい人
- 裏当て金とエンドタブの違いがわからない人
- 裏当て金の材質・厚み・溶接記号を知りたい人
は,ぜひ参考にして欲しい。
裏当て金とは?【エンドタブとの違い】
- 裏当て金とは・・・完全溶け込み溶接の開先裏面に取り付ける金属板のこと
『裏当て金』は『エンドタブ』とよく間違われるが,
- エンドタブとは・・・完全溶け込み溶接においての開先裏面の始端と終端に取り付ける金属板のこと
『裏当て金』・『エンドタブ』どちらも溶接する時の補助材(構造物とみなさない)。
裏当て金の『材質』
裏当て金の材質は,
- 母材と同等以上の材質にすること
が基本。(※設計者から指示がある場合は別)
理由は,
- 裏当て金も母材と溶け込むため,強度や材質は母材同等にしておく必要があるから(強度や材質が違うとその部分は弱くなる恐れがあるから)
具体的には,
- SS400とSS400の板を溶接する場合,SS400の裏当て金
とする。
裏当て金を母材同等の材質とすることで,完全溶け込み溶接として機能する。
裏当て金の『厚み』
裏当て金の厚みは,
- 溶接中に溶け落ちない程度で経済的・合理的な厚みにする
あくまでも裏当て金は補助材(構造物ではない)なので,明確な決まりはない。
板厚によって,裏当て金の厚みは変わる。
具体的には,
- 9mmと9mmの板の裏当て金は4~6mm程度
にすることが多い。
薄すぎると溶接中に溶け落ちてしまうし,厚すぎると材料の値段が高く重量も増え扱いが困難になる。
いわゆる,『良い感じの厚み』にすることが重要。
ちなみにJIS溶接試験では,板厚ごとに指示がある。梁などは図面に指示があるので,その通りにすること。
裏当て金の『溶接記号』
裏当て金の溶接記号は,
溶接の補助記号と言われ,基線の上に書く。
補助記号は見落としがちなので,記号の意味ぐらいは覚えておこう。
裏当て金の『良い点・悪い点』
先日,裏当て金の良い点・悪い点について下記のようなツイートをした。
【裏当て金について】溶接初心者用
完全溶け込み溶接の開先裏面に取り付ける金属板のことで,材質は母材同等。
【良い点】
1.溶接不良が少なくなる
2.溶接効率が良い
3.開先隙間のシビアさがなくなる【悪い点】
1.配管内だと異物&乱流
2.密着固定するのが手間
3.材質管理・員数管理が必要— Mac好きな溶接工@職人の概念をぶっ壊す! (@kaisyabaibai) August 21, 2021
【裏当て金について】
完全溶け込み溶接の開先裏面に取り付ける金属板のことで,材質は母材同等。
【良い点】
1.溶接不良が少なくなる
2.溶接効率が良い
3.開先隙間のシビアさがなくなる【悪い点】
1.配管内だと異物&乱流
2.密着固定するのが手間
3.材質管理・員数管理が必要
上記ツイートを深堀していこう。
裏当て金の良い点
裏当て金の良い点は3つ
- 溶接不良が少なくなる
- 溶接効率が良い
- 開先隙間のシビアさがなくなる
上記をまとめると裏当て金は,
溶接がしやすく,溶接不良が少なく,作業も早い
例えば,完全溶け込み溶接の場合,板と板を溶接する時に隙間(ルート間隔)を開けるのだが,裏当て金がないと『裏波溶接』するか『両面から溶接するか』のどちらかをしなければならない。
つまり,裏当て金がないと『手間』が増え,『溶接技量』も必要になる。
裏当て金は,
- 梁のフランジ部
- 配管の開先
- 板と板の開先
などの場所に使われている。
上記のような場所は数勝負になることが多く,裏当て金で溶接するメリットは計り知れない。
裏当て金の悪い点
裏当て金の悪い点は3つ
- 配管内だと異物&乱流
- 密着固定するのが手間
- 材質管理・員数管理が必要
配管内だと異物&乱流
裏当て金は,配管内に取り付けることもある。
現場では,配管内の裏当て金のことを『バックリング』と呼んでいる。
バックリングは配管内に取り付けるため,異物になり蒸気や水などの乱流を巻き起こすデメリットがある。
なので,配管の完全溶け込み溶接は『裏波溶接』が基本。
もし,配管内に『バックリング』をつけたければ,異物&乱流のデメリットがあることを理解しよう。
密着固定するのが手間
裏当て金は,母材と密着させることが重要。
その理由は,母材と裏当て金が密着していないと,その隙間が溶接欠陥となりやすいから。
しかし,密着させるのは裏当て金が長ければ長いほど面倒。
溶接して叩いたり,一度取り外して磨いたり…。
単純に邪魔くさい…。
溶接自体は楽になるが,準備が面倒。
でも,溶接に欠陥入りやすい裏波溶接するぐらいなら,裏当て金のほうがマシか…。
みたいな感覚でしかない。
溶接に技量がある人からすれば,裏波のほうが楽っていう人もいるぐらい。
裏当て金は,取り付けるのが手間っていうデメリットはある。
材質管理・員数管理が必要
裏当て金は材質管理・員数管理が必要だ。
その理由は,
材質管理・・・裏当て金として加工すると,刻印やステンシルが消えてしまうから
員数管理・・・裏当て金は梁のフランジに使用する場合が多く,大量に加工するから(取り付け場所によっては微妙に寸法も違う)
例えば,
・大量の金太郎飴の中に,一本だけハイチュウが入っていたら?
・ラコステのポロシャツの中に,一枚クロコダイルが入っていたら?
絶対に間違いますよね??
大量に作った裏当て金は,材質管理・員数管理をしっかりしないと間違えるデメリットがある。
もし,材質・寸法などを間違えて取り付けてしまうと,強度不足・溶接部割れなどにつながるので注意。
【裏当て金】材質・厚み・溶接記号・良い点・悪い点:まとめ
裏当て金とは・・・完全溶け込み溶接の開先裏面に取り付ける金属板のこと
材質は・・・母材と同等以上の材質にすること
裏当て金の良い点・悪い点
【良い点】
1.溶接不良が少なくなる
2.溶接効率が良い
3.開先隙間のシビアさがなくなる
【悪い点】
1.配管内だと異物&乱流
2.密着固定するのが手間
3.材質管理・員数管理が必要
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